Interview with FASHIONISTA 01|ROSE(stylist)
AoCによる注目のFASHIONISTAをピックアップするインタビュー企画の第一弾として、stylist 榊原優佳さんへのインタビューを行った。
gothic & girlyカルチャーに影響を受けてきたと語る彼女のスタイリングは甘さと少しの毒っ気を持ち、女の子の魅力を最大限に引き出す。また、東京から拠点を台湾に移し、「Wellness」をキーワードにファッションを考えると語る。
そんな榊原(通称ROSE)さんに学生時代のこと、スタイリストとしての仕事に対する思いや、スタイリストや業界を志す学生へのアドバイスなどを伺った。
(Interviewer:Sawa, Mio, Riko)
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Mio:ファッションウィークの過ごし方についてもお聞きしたいです。
ROSE:海外はパリからコペンハーゲンあたりまで、参加できなくても基本的に全部見て、東京はほぼ全部参加します。
Sawa:こういう世界観のブランドしか見ない、ではなく、本当にもう全部見る、という…?
ROSE:はい。本当だったら好きな世界観だけにしたい気持ちもあるんですけど、でも全部参加してみるとやっぱりイメージがとても変わるし、そこまで興味ないかなと思っていたブランドでも、とても良かった!とかなるから絶対参加しますね。パリやロンドン、ミラノに関してはシーズンはじめに必ず新作のお仕事を頂くので、主要メゾンは一通り必ず見ます。特に靴とバッグは絶対に毎シーズン頭に特集があるので、そこで傾向をちゃんと見ておく。これはもう本当に、スタイリストの仕事の一環です。
Mio:ありがとうございます。
Riko:これまで沢山の作品を手がけられてきたと思うのですが、その中で1番思い出深く、ご自身が気に入られている作品などがあれば教えていただきたいです。
ROSE:1つはKatieというブランドの25周年のビジュアル。自分は16歳頃からお店に通っていたんですよ。仕事を通して、Katieのデザイナーさんとお会いするようになって、大切な節目のビジュアルをお願いしてくれて。自分の好きなものが変わらないのもすごいなと思ったんですけど(笑)、そのお仕事がすごく嬉しかったです。
あとは玉城ティナちゃんとananで一緒に撮影した作品。テーマがすごく自由だったんですが、日常的な風景のロケ場所で彼女に何種類か非日常なドレスを着てもらいました。そのページは、自分が目指す、ファンタジーでガーリーだけど少し変な世界感をちょうどよく表現できた気がしていて。写真があがったのを見て、すごく嬉しかったです。
Riko:テーマが自由に設定されているのは、珍しいことなのですか。
ROSE:うーん、かなり自由というのは少し珍しいかもしれませんね。
多分皆さんが思っている以上に、スタイリストのお仕事ってビジネスの世界。もちろんクライアントさんがいて商品があって…なので当たり前ですが、私はスタイリストはアーティストではないと思っています。その中でどれ位自分の感覚を活かせるかですよね。たまに年に1回ぐらい、少し自由にやらせて頂ける撮影があったりして、ご褒美をもらう子供みたいな気持ちになります。
Riko:そのような世界だとは知らなかったので驚きです。
ROSE: そうですよね。それはそれで楽しいですけどね。
Riko: ありがとうございます。
次は、イチオシのブランド等、最近気になっているブランドがあれば聞かせていただきたいです。
ROSE:日本のブランドだと、ファッションが好きな人たちにはもう有名かもしれませんが、kanako tamura(@kanakotamura_official)。デザイナーさん自身も若くて可愛い方ですが、細かい部分や質にとてもこだわられていて、すごいなと思います。なのでロマンチックですが芯が強い。甘いけれどニュートラルな所も好きです。
Riko:海外だったら…?
ROSE: 海外だったら、r.l.e(@r.l.eofficial)が、すごく可愛いなと思う。ロンドンのブランドで、とても繊細な世界観です。
基本的に甘いものが好きですが、そういうブランドって今じゃすごく多いですよね。その中でkanako tamula やr. l. e は表面だけじゃない品がちゃんと宿っているブランドだと思います。
Riko:とても素敵ですね…!ありがとうございます。
では、ROSEさんがオフでどのような過ごされ方をされているのか、お聞きしてもよろしいでしょうか。
ROSE:基本的に家にいることはなくて、絶対外に出ます。
以前は買い物したり基本的に情報の中を回りたかったんですが、最近は引越したのもあり、旅行したりとかインプットする内容がちょっと変わった感じがします。
Riko:自然を感じに出かけたりとか?
ROSE: うん、そうですね。今年の夏は中学生ぶりに海にいきました。でも、私だけじゃない気がする。Wellnessという言葉ができているぐらいだから、自然の中で穏やかに過ごす時間はみんな求めているのではないでしょうか。
Riko:ありがとうございます。
再びお仕事についてなのですが、何故飯田さま(飯田珠緒さま)にアシスタントとして就かれたのかをお聞きしたいです。いろんな方に、履歴書とか送られたのか、コネクションがあったのか、など。
ROSE:写真をやっていた美大の時に就活はしなくて、大学4年生の時に出版社のアシスタントに応募したんですね。出版社のアシスタントは、誰かの直属ではなくて、その編集部のアシスタント。そこでライターやスタイリストのお手伝いをさせて頂いたのがキャリアスタートです。 そのままライターとして1回独り立ちしたので、20代の時はファッションライターとして働いていました。当時は原宿系と呼ばれるカルチャーが盛りあがっていて、自分もそのど真んで毎日本当に楽しく、寝る暇もなく 仕事していました。
ですが、忙しなく働いているうちにふと、自分が消費されてしまっているような気持ちになってしまって。映画やカルチャーがすごく好きで始めた仕事なのに、そうではなくて表面しか必要とされていない。服も安ければ安いほど良いみたいなブームの時だったので、それがすごく怖くなって。自分はファッションが本当に好きだからこれから先もずっとこの仕事をしていくと決めていたのですが、多分今のままだったら続けられないなって。
Riko:そうなのですね。
ROSE:まずは自分の中身をもっと強く持って、好きなものを武器にできるようにしないとこのまま消費されていく気がして。もちろん消費されているなんてただの自分の主観ですが。
そういう意味でも飯田は憧れのスタイリストでした。カルチャーをすごく大切にする人です。そんな飯田のそばにつかせてもらって、1から勉強し直した方がいいかもしれないと思って。なので、飯田のアシスタント に就いたのが28歳で、大人になってからでした。ただ、私もライターで遠くはない業界にはいたので、 共通の知人に紹介して頂いて、面接してもらったという感じですね。だから、いろんな人に応募はしてないです。飯田だけ。ライターではなく、スタイリストに転向したのはよりファッションと交わりたかったからです。と言いつつ、今はまたライター業も少し復帰させて頂いています。オンラインで出来ますし。人生、無駄な事なんてないんだなあとしみじみ思っちゃいますね。
Riko:28歳の時に飯田さまのアシスタントになられたということで、新たな世界に踏み入れるのは覚悟を持たなければできないことだと私自身は思ったのですが、その葛藤等があれば、お話していただきたいです。
ROSE:私は全然なかったんです。なんだろう、性格かな。自分が好きなことをただやっているだけで、歳は何も関係ないっていうか。
でも、周りには言われましたよ。28、あー最後の挑戦だね、みたいな。今しかないかもね、頑張って!とも言われましたけど、今振り返ると、歳は関係ないと思います。 逆に言ったら、皆さんの年齢ぐらいでスタイリストとしてバリバリやっている方もいるし、本当に歳は関係ないんじゃないかなって当時も今も思います。
専属のアシスタントはやっぱりすごく大変でしたが、全ての経験が自分の財産になっています。
Sawa:歳は関係ないとのお言葉、大切にしていきたいと思います。
ちなみに、当時はどのような生活をされていたのですか?
ROSE:私は丸5年ついたのですが、とにかく毎日撮影と準備、衣装やプロップ探しで走り回っていました。
Sawa:それでも続けようと思えたのは、やはりそのファッションが好きだという気持ちと、ずっとファッション業界で生きていこうという意思があったからということなのでしょうか。
ROSE:好きっていう気持ちは大きいですね。辛い時もお洋服は可愛いので。(笑)
あとはアシスタント同士の友達も沢山いましたし、私はもともと東京出身なのでさびしい思いをしなくて済んだのも良かったかもしれません。金銭的にも、都内に実家があるような子は強いかもしれないです。
Sawa:意志と環境はやはり重要なのですね。
独立はどのような経緯でされたのでしょうか…?飯田さまに独立を促されて、という感じなのでしょうか。
ROSE:飯田の場合はですが、「アシスタントが卒業しましたとちゃんと私が胸を張って言える状態にまでならないと、独立させてあげられない」と面接の時点で言われていたんですよね。でも5年もついていたら、さすがにもうしっかりしてくる。(笑)
それで、次の後輩がもうちゃんとまかせられそうだなっていうタイミングで、じゃあ何月に卒業で。みたいな感じでした。
(to be continued…)
榊原優佳(ROSE):スタイリスト。飯田珠緒氏に師事後独立し、雑誌やWeb、女優などのスタイリングを手がける。現在は台湾在住。
Instagram:@yukasakakibara_