FDL ファッションショー「カラノ」 インタビュー
立教大学を拠点に活動する服飾デザイン研究会(以下FDL)のショーが先月4日に行われた。今回は、ファッションに関わる学生に焦点を当てたインタビューとして、FDLの代表を務める浜田空さん、デザイナーを務める坂本衣織さん、朝日美月さん、池田泰生さんに今回のショーについて伺った。
代表:浜田空さん
ー改めてFDLの紹介をお願いします。
浜田:FDLは65年の歴史を持つインターカレッジのサークルです。主な卒業生にはKEISUKEYOSHIDAの吉田圭祐さんやflussの児玉耀さんなどがいらっしゃいます。
ー他の団体との相違点は?
浜田:学校に属していない「独立した団体」として活動しているところですかね。完全に学生のみで運営しており、大人と関わることで生まれるしがらみから解放された活動ができるところです。
ー今回のファッションショーのコンセプトついて
浜田:「カラノ」というショーになるのですけど、テーマを決めるにあたってまず「自分たちの軸」「社会的な軸」の2つの軸を設定し考えていくうちに来年に行われる万博が浮かんで来ました。そこから90年に行われた「国際花と緑の博覧会」で松本零士氏がいちょう館のテーマと設定した時空快速艇「カラノ」がインスピレーションとなりました。リサーチをする中でその元ある古事記の「枯野伝説」というところに辿り着き、それらからドローイング等の作業を通し今回のテーマを決定するに至りました。
ー「カラノ」から表現したいものとは?
浜田:戦後に発達した日本のナショナリズム、ある種の「和ブーム」といった時代や、最近の寺や廃墟の流行りがある中で、「伝統的な日本は失われてしまった」といった議論は往々にしてされてきました。古事記の「枯野伝説」、90年の松本零士氏による「カラノ」、そして僕らが描こうとする「カラノ」という3つの構造がある中で、私たちは「形骸化してしまった構造」「構造の飛距離」を表現したいと考えています。
ーショーで特に注目してほしいところはありますか。
浜田:独立したインカレサークルならではの多様な学生の存在を生かして、映像や音楽といった複合芸術としての試みを考えています。今回はショーの初めに導入映像を準備しているところですかね。
ー学生としてファッションショーを行う意義とは。
浜田:学生という枠に捉われずにやろうという気持ちは強いです。学生気分でやっていたらそれは文化祭じゃないですか。自分たちが学生であることを忘れるために、自分たちがプロになった意識で挑戦できるということに意義を感じます。
デザイナー:坂本衣織さん
ールックの説明をお願いします。
坂本:「枯れる」というイメージを軸に考えた時、一番に思い浮かんだのがお花でした。花は綺麗なイメージを持つ一方で、街に揺られているお花も土から生えて切られた瞬間から死に向かっている。だけどその状態でもお花を贈られたら誰かを喜ばせられるという過程が美しいと思いました。今回はおばあちゃんの昔着ていた服の一部や、使えなくなった服を用いて、枯れてしまったものが組み合わさって誰かを美しい気持ちにさせるという過程を意識しました。
ーインスピレーション元や、具体的に思い浮かべたものはありますか?
坂本:今回のモデルが妹なんですけど、その妹の名前が「きなり」って言うんです。漢字は違うのですが「生成色」が名前の由来になっていて。あとから染められてない自然の状態を表現したくて、そこで名前からインスピレーションを受けました。また、女性のボディシェイプに昔から美しさを感じていてそこを表現したいと思っています。
デザイナー:朝日美月さん
ールックの説明をお願いします。
朝日:お花っていうイメージが最初に浮かんで、「枯れる」ことに注目しているルックが多かったので私はその対比として「咲かせる」ことに焦点を当てました。コンセプトにしたのは「花魁」です。マインドマップをみんなで作成していた際に私を構成するネガティヴな一面からアプローチしていきました。そこで昔遊んだ花一匁からインスピレーションを受けました。小学生の時に選ばれなくて一人だけ残ってしまったという過去があって、そこから私の卑屈な部分が生まれたのかなと思っていて。その経験を今回の服作りに繋げました。
元々花一匁は花魁を選ぶ吉原の遊びだったんですね。偉い男の人たちが安い値段で女の人を買い付けていくという暗い背景があって。選ばれちゃいけないけど選ばれなかったらいけないじゃないですか。「私を選んでで欲しいから、今度は綺麗に咲いてみせる、私を選んで」という心情から華やかに、花魁から着想を得ているので柄は和柄にしました。
デザイナー:池田泰生さん
ールックの説明をお願いします。
池田:「退廃的な世界」というものを表現しています。もし世界が終わったら我々はどんな服装をしているのかと考え、大学の講義で学んだ身体と、自分の好きなアニメやゲームに登場する廃墟をインスピレーションにしつつ制作しました。また、人間の細い体に惹かれて、タイトなシルエットで肌を見せるような作りに仕上げました。
ールックに込めた想いとは。
池田:「0から1を作りたい」と強く感じています。自分の作品を見た誰かが他のものを作るという流れが生まれることが素敵だなと思い、そのようなきっかけになればいいなと思います。
服飾デザイン研究会
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