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Chasing Summer in Italy: Notes from Fashion Week 

arcofcol0218@gmail.com

連載企画 ”旅先から覗く街とカルチャー”

旅先で出会うのは、風景だけじゃない。そこに息づくカルチャーそのもの。

私たちは、服をただ“着るもの”としてではなく、歴史や音楽、映画、街の空気感と結びついたカルチャーの一部として捉えている。

この夏は、連載企画として、部員それぞれが訪れた場所を起点に、その土地で感じた文化やファッションのつながりを紹介していく。

旅の記録を超えて、土地とカルチャーが交わる瞬間を、ともに覗いてみたい。


連載第三弾の今回は、イタリア編。


夏のイタリアを巡りながら感じたのは、街ごとに変わる“温度”だった。

フィレンツェ、ベネチア、ミラノ。三つの都市には、三者三様の表情がある。

ファッションウィークの喧騒の中で感じた、“リアルなイタリアの今”の記録。

Firenze

15時間のフライトの後、最初に訪れたのはフィレンツェ。

「花の都」と呼ばれるフィレンツェ。
ルネサンス期の建物が立ち並び、歴史の中を歩いているようだ。全ての芸術があると言っても過言ではない。

職人の街らしく、革製品のマーケットも多い。バーキンに極めてよく似たバッグが並ぶことも。

観光客には若者の姿も多く、街には個性豊かなヴィンテージショップが並んでいる。
地元の若者のファッションはどこかストリートライク。Dieselのロゴを何回見たかわからない。

有名な大聖堂。細部に執念が宿っている。

What I wore in Firenze

Tops: Vivì
母の友人であるイタリア人デザイナーのブランド。今回の滞在でもおうちに泊めてもらうなど、本当にお世話になりました。
珍しい生地と、日本ではあまり見ないシルエットがお気に入り。

Necklace: vintage
家にあったもので、確かフランスのデザイナーの作品。ヒトデとか貝とかカニとかがついていて可愛い。
見知らぬアメリカ人女性にも褒められた一品。

The Firenze soundtrack

Timezone – Måneskin
イタリアといえばマネスキン。
“大切な人と遠く離れた場所にいる”という曲なのだが、歌詞に出てくる「7000マイル」という言葉は、日本とイタリアの距離とほぼ同じ。
そんな偶然もあり、この夏の旅にぴったりの一曲。

Venezia

二つ目の都市はベネチア。運河の街で、水の都とも称される。

駅を出ると、目の前にいきなり運河。船がひっきりなしに行き交っていて、分かってはいても新鮮な光景に圧倒される。

とにかく人が多い。島内には車がなく、移動手段は水上タクシーか水上バス、あとは徒歩のみ。

ベネチアには世界各地のお金持ちが集まっている。ファッションもどこかOld Money寄りだが、カジュアルにハイエンドのアイテムを使う人が多い。

自分の船を持っているらしい家族がウィリーしていたり、水着姿のカップルがボートを交互に運転していたり。
いったい何で生計を立てているのだろうか。

本島のほかにもいくつか島があり、有名なベネチアングラスはムラーノ島で作られている。
デザインの幅が広く、とても可愛い。つい爆買いしてしまった。

ガラスの寿司とガラスのお花。

What I wore in Venezia

Tops: Salvatore Ferragamo
90sくらいのレモンイエローのワイシャツ。
大きめのガンチーニが全体に入っており昔のフェラガモらしさがある。バカンス感が出ます。かなりベネチア。

The Venezia soundtrack

Dancing Queen – ABBA
ベネチアといえばバカンス、バカンスといえば『MAMMA MIA!』。
オリジナルも最高だが、映画のサントラ版のほうがよりベネチアっぽい。
この曲を聴きながら海沿いのバーで昼過ぎからお酒を飲んだのが、ベネチア滞在のハイライト。

Milano

最後の都市はミラノ。
都会的でモードなイメージのある街だが、ファッションウィーク中のミラノはさらに一味違う雰囲気を纏っている。

サンローランの路面店前に積み上げられた段ボールのゴミ。示唆に富んでいる。


2025年のミラノファッションウィーク(MFW)は、9月23日から29日まで。私がミラノに着いたのは前日の22日の夜だった。

とはいえ、何の肩書きもない人間がショーを観られるわけもなく、できるのは街の空気を感じること、ポップアップを巡ることくらい。
それでも、街を歩き回るだけで多くの発見がある。

ミラノ中央駅に着いた瞬間から、業界人らしき人々がそこかしこにおり、一気にファッションウィークのミラノにいることを実感する。

モデルやインフルエンサーなど、普段出会う機会のない人々も多く見かける。
泊まっていた部屋の近くのスーパーには、モデルたちが毎日のように現れてはビールを探していた。

アーカイブショップを回っても、見かけるのはほとんどモデルかインフルエンサー。
セレブや人気インフルエンサーたちは窓の見えない送迎車で移動していて、そのせいで渋滞がひどい。

昼間、街の中心部ではショッパーと衣装カバーを抱えてLuupを飛ばす人たちが行き交っていた。
『プラダを着た悪魔』のエミリーそのままの光景がとても印象的だった。

すれ違う人々はスーツやシンプルな服装が多いが、その中にもミラノらしい洗練されたエッセンスがある。

仕事のためのスーツですら、色使いや小物へのこだわりがありbasicにならない。
サンローラン風にネクタイをシャツに半分仕舞ったり、マルジェラのタビを合わせたり。

wear というより dress という感じ。エレガントさ・クラシックさ・成熟した雰囲気を好むのが、東京とは対照的だ。

CHANELのタグらしきものが、タバコの吸い殻と共に捨てられていた。

What I wore in Milano

Tops: Rick Owens
ニットのワンピース。シンプルながら背中のステッチがちゃんとリックっぽくてちょうどいい。

Bag: used
ノルウェーの古着屋で買ったもの。完全に一目惚れで値段は見なかった。
柄が挑戦的に見えるが案外使いやすい。

Skirt: Burberry
定番のバーバリーチェックだが、あえての白オンリーなのがさりげない。
シルクみのある生地なので、ミラノっぽさもある。

Shoes: Prada
かなり昔のプラダのサンダル。
シルバーでストラップのデザインもfancyだが、ヒールがないためいかつすぎなくて良い。

The Milano soundtracks

Vogue – Madonna
街を歩いていて、『プラダを着た悪魔』すぎるシーンに何度も遭遇してしまった。 となれば、この曲を聴かないわけにはいかないでしょう。

エイリアンズ – キリンジ
疎外感とか異邦人としての意識を描いた曲だと思うので、海外にいるときに聴くとインスタントにエモがれる。一人旅で自意識に浸りたい時におすすめ。


旅をしていると、街ごとに“おしゃれ”の意味が少しずつ違うことに気づく。

それぞれの街に流れる時間の速さや空気の重さが、スタイルに滲んでいた。

ファッションはトレンドやブランドの話だけではなく、その土地に生きる人のリズムや価値観、カルチャーそのものを映すものだと改めて感じた。

そんな“街のスタイル”に触れることが、旅のいちばんの醍醐味なのかもしれない。




Written by Risa

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