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「建築由来、完全内製の明大服飾団体」|明治大学デザイン研究部ファッションショー「めぐる」学生インタビュー

arcofcol0218@gmail.com

都内の大学に拠点を持つ服飾団体の中でも、明治大学デザイン研究部/DE.KE.NN(以下デケン)ほど異色の経歴や歴史を持つ団体はない。明治大学の生田キャンパスに拠点を持つ彼らは、2025年12月、PLAT SHIBUYAにて2025ファッションショー「めぐる」を開催した。ファッションに携わる学生に焦点を当てたインタビューとして、デケンの代表を務める池田安喜さんとモデル/デザイナーの葛西花さん、金井楓芽さんに今年のデケンとショーについてお話を伺った。

−団体の理念、今年の活動方針について簡単な紹介をお願いします。 

池田:デケンは1953年に建築学生によって作られたサークルです。当時の具体的な活動内容や成立背景に関しては記録が残っていません。2010 年頃から学祭でファッションショーを行い、2022年度・2024年度、そして今年度は外部会場を用いてより多くのお客様に届けることを目的にショーを開催しました。

現在はファッションショーを媒介にデザインすること・表現することを大切に活動しています。私たちの特徴は、モデル、デザイナー、メイク、カメラ、運営まで全て自給自足で行っている点にあります。

しかし、明治大学の生田キャンパスに拠点があることから明大生でも知らない人が多かったです。この現状を打破するために今年度はデケンの学内外への周知を掲げて活動規模を大きくすることに尽力しました。

具体的には内部基盤の安定や積極的な渉外活動、ショーのクオリティの追求という3点に取り組み、着実に成果をあげたと思います。結果として今回AoCさんから取材のお話をいただいたことを含め、多くの方たちに私たちのショーを届けることができました。

−今回のファッションショーのテーマやコンセプトについて

池田:みんなで決めた「めぐる」というタイトルは「未完成の完成形」というコンセプトと、「生と死」という概念が合わさって生まれました。私たちは基本的に古着を譲っていただき、それをリメイクすることでルックを製作しています。このような経緯から生産から着用、そして役目を終えて廃棄または再利用となる、服の循環について身近に感じていたことが着想元になっています。既製服として形になっているものをショールックとして別の形に生まれ変わらせることができると考えました。また、ファッションに限らず創作活動全般を大事にしている私たちだからこそ、一度完成した作品でも時間経過によって ”まだ手を加えれることができたな” ”あのときはまだまだだったな”と思うことが多々あります。創作活動への向き合い方が、私たち自身と重なっていると感じるようになりました。昨今は完璧な結果を重視する傾向がありますが、学生という発展途上の私たちだからこそ、完璧な結果である「完成」を追い求めながらそこに至る過程を大切にしたいと考えます。

このように「未完成の完成系」と「生と死」から部員全員で思考を広げコンセプト理解を行いました。

衣服が「めぐる」こと、また私たち自身の生き方、そしてファッションショーは再現性が無く一回きりのものだということ、これら3要素を生き物の生と死に重ね、コンセプトから「めぐる」というタイトルが完成しました。

−「めぐる」から表現するものとは

池田:ルックに関しては多くの部員が古着や自身の着なくなった服を使って製作しました。去年のルックの形や素材を活かして、新しく解釈することで「めぐる」を表現している部員もいました。また、「めぐる」という言葉から部会のコンセプト会議で螺旋構造やや四季との関連性を取り上げモチーフにしている人も多かったです。

さらに今回初めての取り組みとして、ルックブックの製作を行いました。ショーが終わっても私たちの表現がお客さまの心にどこかに残っていてほしい、そのために実物で見返せるようにという思いから企画しました。撮影も編集も冊子の発行も初めてだらけで手探りでしたが、好評を得ることができ苦労した甲斐があったと思います。

葛西:私の場合は自分の持っている服を上下どっちも使ったので、自分の服でどれだけショーのコンセプトに近づけられるかというのをやっていて、螺旋のモチーフを散りばめたり、ドレーピングもめぐっていくドレープをコンセプトでやったりしながら自分の中で解釈して作りました。ファーストルックに選ばれたのもコンセプトへの忠実さが出たのかなと思います。

−今回のショーの演出等、こだわりの点について

池田:私はデケン三年目ではありますが、主導して全体で企画製作に取り組んだのは初めてで部員の力量が正確に掴めず最大限を模索しながらショーの製作に取り組みました。演出に関してはショーの雰囲気の要となる音楽を必死に探し、またショー序盤のお客様へ世界観に入り込んでもらうために朗読やウォークではない動作を組み込みました。映像だと昔のデケンのショーで使っていたものから影響を受けて部員が製作してくれました。さらに螺旋イメージで布の配置、小道具や音で光が反応するオブジェクトを用いました。

演出装置以外のこだわりとして、やはりモデルのウォークにも力を入れました。本来身長や骨格に恵まれた方でないとモデルを出来ませんが、デケンではモデルとして立つことができます。勿論素人であるため一見簡単そうに見えても、沢山の人に囲まれてきちんと姿勢を正し、堂々と均一に歩くということは練習を詰まないと出来ないことです。モデル・ショーの演者として人前に立つことの意識を伝え、部会で練習し部員同士で良く見える角度や魅せ方を研究していました。本番でも多少の緊張はあったと思いますが、自信をもって全員がウォークを行えたと思います。

−学生でショーを行うということの意義や役割について

池田:まず1番は、営利性やトレンド性を問わずに自分のやりたい表現ができるところです。お金の絡みが無いからこそ本当にやりたいことができ、また私たちはデザイン修正やルックの統制は例年行っていません。これまでの先輩たちのルックを見て触発されたことで今回もルックに対する多様なアプローチが見られました。次に学生と舞台表現、とくにショーは刹那的という共通点があると思います。私たちはルックやショーの準備に対してたくさんの時間をかけますが、披露するのは1人当たり1分足らずのウォークのみです。一瞬のことで不可逆的である、ということは期限を持つ学生の今しかできないことと重なると思います。また、ファッションショーは1人では行うことができません。デザイナーやディレクションなど個人のやりたい表現とどうやって全員の表現に落とし込むか、デケンという集団の表現にしていくかと交錯します。これらを1番両立できる機会であり、その交錯の中で部員と議論することで充足した製作活動することが学生ファッションサークルならではだと思います。この考えから、みんなでショーを作り上げる姿勢や組織作りをとても大事にしました。と思って学生のサークルだからこそみんなでやるっていうのも大事にしていますね。


Look 1

Model/Designer: 葛西花さん

−ルックの説明、インスピレーション元やこだわりをお願いします。

葛西:スカートについては、さっき話したようにドレープの形とかを「めぐる」と繋げて頑張ったんですけど、トップスの形に関してはシュロ縄という造園用に縄を用いていて、高校で造園をずっとやっていた経験からこれを使いたいと思いました。この縄はチクチクするし手も汚くなる臭い縄なんですけど、どこかに自分の経験っていうのを入れ込んで自分にしかできない表現をしたいってずっと思っていたので、高校時代の思い出を強く反映させるようにこの縄が際立つようなルックにしたくて制作しました。


Look 9

Model/Designer: 金井楓芽さん

−ルックの説明、インスピレーション元やこだわりをお願いします。

金井:今回のルックのイメージは「幼少期」です。制作には、着なくなった服や家にある使わなくなったものを使いました。これまで服を作った経験がなく、唯一、こどもの日に新聞紙で作った鎧だけが服作りに関する思い出でした。その思い出を「めぐる」と重ねて踏襲し、布ではない素材を使い、服の上から被るような形のものを作ろうと考えました。なので、縫製というよりも工作に近い感覚で制作しました。象徴的なものとして、父のタバコで穴が空いた網戸というインスピレーションの元、糸は使わず火を使って加工しました。網戸は風通しがよいのに、しっかりと張りがあるところが気に入っていて、その硬さの中に柔らかさを感じさせたいと思いました。また、丈の長いスラックスをあえてたるませ、ブーツを履くことで、少し背伸びをして服を着ているような幼い感覚を表現しています。装飾としては、飾りボタンを多く付けたり、好きな色である緑を基調にしたり、螺旋状の電話線をつけてみたりしました。分かりやすくて、どこかおもしろいものを目指すことで、子供の頃から変わらない自分なりの死生観を表現しました。

明治大学デザイン研究会/DE.KE.NN

Instagram:https://www.instagram.com/meiji_dekenn

Interviewer, Editor:Ikuya, Risa, Yutaro

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